
恋愛短編集
第5章 母さんのオムライス
リビングに行くと、既に夕食は出来上がっていた。
卵とチキンライス、そしてケチャップの香りが漂う。
でも、気持ちが追いつかない。
食べたいと思えなかった。
「さぁ、聡。父さんも胡桃もまだだけど、先に食べちゃおっ!」
母さんは帰ってくるはずもない2人のことを言う。
目の前にあるオムライスは本当に美味しそうだ。
でも食べる気がおきない。
「…聡?」
何も食べない俺を見て、不審がる母さん。
いけない、母さんを心配させている。
俺は一口すくい、無理矢理口の中に押し込んだ。
