
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
「はい」
香花は急いで縫いかけの産着や裁縫道具を脇に寄せた。
ほどなく、妙鈴が扉を開けて入ってくる。
香花は素早く立ち上がり、下手にさがり妙鈴を出迎えた。
「体調の方は、どうだ?」
いつになく気遣われ、香花は戸惑った。むろん、そんな気持ちを表には出せない。
「お陰さまで、吐き気も治まって参りました」
無難に応えると、妙鈴が頷いた。
「―私が初めての子を生んだときも、見籠もったばかりの頃は悪阻に悩まされものよ。では、食事の方もちゃんと取れているのだな?」
確認するように訊ねてくる。
一体、どういう風の吹き回しかと香花はつい身構えしまう。素直に義母の優しさに感謝したいのに、今までのなりゆきがなりゆきだけに、つい警戒の意識が働くのだ。
香花は急いで縫いかけの産着や裁縫道具を脇に寄せた。
ほどなく、妙鈴が扉を開けて入ってくる。
香花は素早く立ち上がり、下手にさがり妙鈴を出迎えた。
「体調の方は、どうだ?」
いつになく気遣われ、香花は戸惑った。むろん、そんな気持ちを表には出せない。
「お陰さまで、吐き気も治まって参りました」
無難に応えると、妙鈴が頷いた。
「―私が初めての子を生んだときも、見籠もったばかりの頃は悪阻に悩まされものよ。では、食事の方もちゃんと取れているのだな?」
確認するように訊ねてくる。
一体、どういう風の吹き回しかと香花はつい身構えしまう。素直に義母の優しさに感謝したいのに、今までのなりゆきがなりゆきだけに、つい警戒の意識が働くのだ。
