
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
香花は張峻烈の昨日の訪問を知らない。ゆえに、峻烈の意を受けて、昨夜、真悦と妙鈴の間で話し合いが行われたことも知るはずがなかった。
峻烈はお忍びで真悦を訪ね、この来訪は誰にも―香花にさえも言わないでくれと念を押して帰っていったのだ。
これを、と、妙鈴は風呂敷包みを香花に見せた。自ら風呂敷を解き、白い小さな産着を香花の前に差し出す。
「自分でも、もちろん仕立てるのであろうが、赤児は汗をかきやすいもの。一枚でも多くある方が何かと良かろう」
「あの―、もしかして、これは、お義母上さまが縫って下さったのですか?」
香花が遠慮がちに訊ねると、妙鈴はコホンと小さく咳払いをした。
「当然ではないか。いかに私だとて、産着の一枚くらいは縫える。二十七年前にも、和真が生まれるときは、こうして手ずから産着を縫うたのだからな」
峻烈はお忍びで真悦を訪ね、この来訪は誰にも―香花にさえも言わないでくれと念を押して帰っていったのだ。
これを、と、妙鈴は風呂敷包みを香花に見せた。自ら風呂敷を解き、白い小さな産着を香花の前に差し出す。
「自分でも、もちろん仕立てるのであろうが、赤児は汗をかきやすいもの。一枚でも多くある方が何かと良かろう」
「あの―、もしかして、これは、お義母上さまが縫って下さったのですか?」
香花が遠慮がちに訊ねると、妙鈴はコホンと小さく咳払いをした。
「当然ではないか。いかに私だとて、産着の一枚くらいは縫える。二十七年前にも、和真が生まれるときは、こうして手ずから産着を縫うたのだからな」
