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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第26章 都の春

 私が得たものは、あなたの妻という立場だけで、あなたはヨンウォルの許に心を置いてきたのです。
 妙鈴は乾いた声で言った。
「今の光王の眼は、あの頃のあなたに怖ろしいほど似ています。あの頃のあなたも、いつも私をあんな瞳で見ていた。愛すれば愛するほど、私がヨンウォルを追いつめれば追いつめるほど、あなたが私に向ける眼は冷たくなっていった」
「ヨンウォルをかつて儂が愛していたことは否定はしない。あの時、確かにそなたの申すとおり、儂は本気だった。だが、そのヨンウォルはもうおらぬ。そして、夫人。そなたと夫婦として過ごした二十八年という歳月は、けして短くはないのだ。結婚する前から互いに愛情を抱ける夫婦は幸せには違いないが、残念ながら、儂たちは、そうではなかった。さりながら、連れ添う中に愛情と信頼を築く夫婦があっても良いのではないか」

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