
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
「そなたも名前くらいは聞いたことがあるだろう。建国の忠臣として知られる金優(ウ)松(ソン)を出した名門だ」
その言葉は、香花の懐妊よりも更に彼女を打ちのめした。
「香花が―、金氏の娘だと」
呟くと、真悦が淡々と相槌を打った。
「夕刻、都でも名高い需学者の張峻烈先生がわざわざお見えになり、香花の身許を打ち明けられたのだ」
「まあ、あの都一どころか朝鮮一の知恵者といわれる方がお越しになりましたの?」
それは初耳だった。
「お忍びゆえ、家族にも言わないでくれと頼まれたものだからな。張先生はこうもおっしゃっていた。香花の身許が判ったからには、正式な成家の嫁としての待遇を与えて貰いたいそうだ。張先生と香花の亡くなった父上が生前、親しく付き合っていたそうだよ。先生は、香花の叔母だという人に何とかして欲しいと頼まれたとおっしゃっていた」
その言葉は、香花の懐妊よりも更に彼女を打ちのめした。
「香花が―、金氏の娘だと」
呟くと、真悦が淡々と相槌を打った。
「夕刻、都でも名高い需学者の張峻烈先生がわざわざお見えになり、香花の身許を打ち明けられたのだ」
「まあ、あの都一どころか朝鮮一の知恵者といわれる方がお越しになりましたの?」
それは初耳だった。
「お忍びゆえ、家族にも言わないでくれと頼まれたものだからな。張先生はこうもおっしゃっていた。香花の身許が判ったからには、正式な成家の嫁としての待遇を与えて貰いたいそうだ。張先生と香花の亡くなった父上が生前、親しく付き合っていたそうだよ。先生は、香花の叔母だという人に何とかして欲しいと頼まれたとおっしゃっていた」
