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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第26章 都の春

 妙鈴は良人の問いには応えず、感情のこもらぬ瞳を向けた。
「お話とは何でしょう?」
 真悦が頑なな妙鈴を見、ホウと息を吐き出す。
「香花のことだが―」
 言い終わる前に、妙鈴の静まり返った面に変化が起きた。
「私は絶対にあの娘を成家の嫁として認めるつもりはございません」
 静かだった瞳が異様なほどカッと見開かれ、紅をきれいに塗った唇が震えている。

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