
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
「馬鹿なことを言うものではない」
真悦が真顔で窘めるのに、妙鈴は改めて座り直し、良人を見つめた。
「今更、私の前でご自分のお気持ちを取り繕われなくてもよろしいのですよ」
「儂が自分の気持ちを取り繕う―? それは、どういうことだ」
心外だと言わんばかりの言い様である。
妙鈴は、どこか投げやりな気持ちで言った。
どうせ、良人には嫌われているのだ。今になって、何を言おうと、二人の関係がこれ以上悪化することもないだろう。
「旦那さまのお心は二十九年前、既に冷めておしまいになっているのです」
いいえ、と、彼女は緩く首を振った。
「あなたは、最初から私の方を見ようともなさらなかった。冷めるも何もないかもしれませんね」
「どうしたのだ、夫人。何故、今夜は突然、そのようなことを言う?」
真悦が真顔で窘めるのに、妙鈴は改めて座り直し、良人を見つめた。
「今更、私の前でご自分のお気持ちを取り繕われなくてもよろしいのですよ」
「儂が自分の気持ちを取り繕う―? それは、どういうことだ」
心外だと言わんばかりの言い様である。
妙鈴は、どこか投げやりな気持ちで言った。
どうせ、良人には嫌われているのだ。今になって、何を言おうと、二人の関係がこれ以上悪化することもないだろう。
「旦那さまのお心は二十九年前、既に冷めておしまいになっているのです」
いいえ、と、彼女は緩く首を振った。
「あなたは、最初から私の方を見ようともなさらなかった。冷めるも何もないかもしれませんね」
「どうしたのだ、夫人。何故、今夜は突然、そのようなことを言う?」
