
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
「お仕事にご精を出されるのは良きことにございますが、疲れを出されて寝込まれては何にもなりませぬ。代わりのきかない大切なお身体なのですから」
そう言って、それでも仕事の邪魔になってはとすぐに立ち上がりかけた。と、ふいに真悦が呼び止めた。
「夫人、少し話があるのだ」
何げなく発せられたそのひと言は、妙鈴に嫌な予感を与えた。普段から良人が自分に話があるなどと言い出すことはないのだ。
「何でございましょう、旦那さまの方から私をお引き止めになるなど、お珍しいこと」
別に皮肉のつもりで言ったわけではないのだが、真悦はかすかに眉をつり上げた。
「それは、どういうことだ?」
妙鈴は笑った。
「言葉どおりにございます。旦那さまが私をお嫌いになっていらっしゃるのは、よく心得ておりますもの」
そう言って、それでも仕事の邪魔になってはとすぐに立ち上がりかけた。と、ふいに真悦が呼び止めた。
「夫人、少し話があるのだ」
何げなく発せられたそのひと言は、妙鈴に嫌な予感を与えた。普段から良人が自分に話があるなどと言い出すことはないのだ。
「何でございましょう、旦那さまの方から私をお引き止めになるなど、お珍しいこと」
別に皮肉のつもりで言ったわけではないのだが、真悦はかすかに眉をつり上げた。
「それは、どういうことだ?」
妙鈴は笑った。
「言葉どおりにございます。旦那さまが私をお嫌いになっていらっしゃるのは、よく心得ておりますもの」
