
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第26章 都の春
真悦は書き終えたばかりの手紙を縦長の封筒にしまうと、鷹揚に頷いた。
「ああ、済まない」
妙鈴は捧げ持った小卓を机の傍に置き、湯呑みに入った薬湯を良人に渡す。
真悦は受け取った湯呑みを最初はひと口含み、後はひと息に飲み干した。さも不味そうに顔を歪めたその様がどこかおかしくて、妙鈴は微笑む。
「お薬は苦いですか?」
真悦も笑いながら頷いた。
「何回呑んでも、なかなか、この味には慣れそうにもない」
「苦い薬ほどよく効くと昔から申します。どうか、お身体のためにもご養生なさって下さい」
妙鈴は言ってから、散らかった机の上を見た。書き物をしていたらしく、使いかけの筆や硯が乱雑に置かれている。
「ああ、済まない」
妙鈴は捧げ持った小卓を机の傍に置き、湯呑みに入った薬湯を良人に渡す。
真悦は受け取った湯呑みを最初はひと口含み、後はひと息に飲み干した。さも不味そうに顔を歪めたその様がどこかおかしくて、妙鈴は微笑む。
「お薬は苦いですか?」
真悦も笑いながら頷いた。
「何回呑んでも、なかなか、この味には慣れそうにもない」
「苦い薬ほどよく効くと昔から申します。どうか、お身体のためにもご養生なさって下さい」
妙鈴は言ってから、散らかった机の上を見た。書き物をしていたらしく、使いかけの筆や硯が乱雑に置かれている。
