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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第23章 揺れる心

「光王どの、そなたは、お父上を脅迫するおつもりか? 香花を手放したくないあまりに、お父上を脅迫紛いの言葉で脅かして―」 言葉と同時に、妙鈴が姿を見せた。
 両手に小卓を捧げ持っているところを見ると、真悦に茶でも運んできたようだ。
「脅迫ではございませぬ。真実を申し上げただけにございます。いつから、そこにおいでになっていたのかは存じませんが、それなら話は早い。私の言い分はすべてお伝えできたことでしょう、義母上」
 皮肉げに〝義母上〟と呼ばれ、妙鈴の細い眉がかすかにピクリと動いた。
 普段、妙鈴に対する際、光王は絶対に〝義母上〟とは呼ばない。こう呼ぶのは、あくまでも父である真悦を立てる意味で、彼のいる場所でだけだ。
「義母上は香花の身分がどうのと拘られますが、仮にも両班家の奥方ともあろう女人が廊下で立ち聞きとは、あまり褒められたものではございませぬな」

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