
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第23章 揺れる心
真悦が真顔になった。
「いや、済まぬ。ちと戯れ言がすぎたようだ。許してくれ。儂は光王、香花をとっくに嫁と認めておるし、今になって別れろなどと野暮を申すつもりはない」
「ですが、義母上のお考えは違うようですね」
冷淡に言ってのけた倅を、真悦は溜息をついて見つめた。
「義母(はは)はいまだに和真が忘れられぬのだ。せめて和真に嫁すはずだった彩景をそなたの嫁に迎えたいのであろうよ」
「子を喪った母親の悲嘆は判ります。しかし、それとこれとは全く別だ! 父上、私は義母上の感傷のために、香花と別れるつもりは一切ありません。もし、父上までもが香花と別れろとおっしゃるのなら、私は香花を連れてこの屋敷を出ます」
「光王―」
真悦が痛みに堪えるような眼で息子を見つめたその時、扉の向こうで甲高い声が響いた。
「いや、済まぬ。ちと戯れ言がすぎたようだ。許してくれ。儂は光王、香花をとっくに嫁と認めておるし、今になって別れろなどと野暮を申すつもりはない」
「ですが、義母上のお考えは違うようですね」
冷淡に言ってのけた倅を、真悦は溜息をついて見つめた。
「義母(はは)はいまだに和真が忘れられぬのだ。せめて和真に嫁すはずだった彩景をそなたの嫁に迎えたいのであろうよ」
「子を喪った母親の悲嘆は判ります。しかし、それとこれとは全く別だ! 父上、私は義母上の感傷のために、香花と別れるつもりは一切ありません。もし、父上までもが香花と別れろとおっしゃるのなら、私は香花を連れてこの屋敷を出ます」
「光王―」
真悦が痛みに堪えるような眼で息子を見つめたその時、扉の向こうで甲高い声が響いた。
