
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第23章 揺れる心
「な、何と」
妙鈴が言葉を失った。
「義母上、人の価値とは果たして貴賤の別だけで決められるものでしょうか? たとえ身は綺羅を纏い、数え切れぬほどの玉で身を飾り立てたとて、心賤しき人はどこにでもいるものです。いや、むしろ、中身のない、つまらない人間だからこそ、外見に拘り必要以上に見栄を張ろうとするのやもしれません。裏腹に、襤褸を纏うその日暮らしの民の中にも、心ある者はおります。私は、そういった者の方こそが真の人間といえるのではないかと常々、考えております」
滔々と述べ立てる光王を、妙鈴は唖然として見つめていた。紅をきれいに塗った薄い唇が小刻みに戦慄(わなな)いている。
「そ、そなたは一体、何が言いたいのだ?」
暗に妙鈴のような華美贅沢に耽る者こそが心の賤しい人間だと指摘されたのだ。気位の高い妙鈴にはさぞ痛烈な皮肉となったに相違ない。
妙鈴が言葉を失った。
「義母上、人の価値とは果たして貴賤の別だけで決められるものでしょうか? たとえ身は綺羅を纏い、数え切れぬほどの玉で身を飾り立てたとて、心賤しき人はどこにでもいるものです。いや、むしろ、中身のない、つまらない人間だからこそ、外見に拘り必要以上に見栄を張ろうとするのやもしれません。裏腹に、襤褸を纏うその日暮らしの民の中にも、心ある者はおります。私は、そういった者の方こそが真の人間といえるのではないかと常々、考えております」
滔々と述べ立てる光王を、妙鈴は唖然として見つめていた。紅をきれいに塗った薄い唇が小刻みに戦慄(わなな)いている。
「そ、そなたは一体、何が言いたいのだ?」
暗に妙鈴のような華美贅沢に耽る者こそが心の賤しい人間だと指摘されたのだ。気位の高い妙鈴にはさぞ痛烈な皮肉となったに相違ない。
