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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第17章 夢の終わり

 だから、どこかで見たような気がしたのだ。
 しかし、思い出したときには、もう遅かった。
 つい先刻まで、香花は猿轡をされ、手脚も縛られていた。手脚をできるだけ傷つけない配慮か、縛っているのは縄ではなく、柔らかな布でできた紐である。
ここに閉じ込められたのが昨日の昼過ぎ、それから三回、ソンジュが食事を運んできた。そのときだけ、猿轡は外されるが、手脚の縛めは解かれない。
 つまり、ソンジュが香花に食べさせてくれるということらしいが、香花は頑なに食べるのを拒否していた。
 大体、やり方が許せない。強引に養女になれと言い出したり、いきなり攫ってきて監禁するなんて卑怯だし、あまりにも身勝手すぎる。
「―それはないと思うわ」
 香花は呟くように言った。
 え、と、ソンジュが顔を近づける。
「何か―おっしゃいましたか?」

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