
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第17章 夢の終わり
眼の前のソンジュが困り果てたように小さな吐息を吐く。
「お嬢さま(アツシー)、どうかお願いだから、少しでも食べて下さいまし」
懇願するソンジュの様子だけを見れば、香花が囚われの身で、ソンジュがその世話係だとは思えず、むしろ、その逆にさえ見えなくもない。
今、香花の脚許には粥の入った器と匙の載った小卓が置かれていた。むろん、粥はひと匙も手が付けられていない。
ここに連れてこられて、既に丸一日以上が経っている。今、自分が閉じ込められているのがそもどこなのか、香花にはおおよその見当がついていた。灯台下暗しというように、理蓮は香花を我が住まい―つまり県監の屋敷に隠したのである。
恐らく、今、監禁されている場所は、四阿からもかいま見えた物置小屋だ。現に、香花の推量が的中しているのを物語るかのように、狭い室内には石臼や鋤、鍬、大きな竹籠などが雑多に放置されている。最近はあまり出入りする者もいないようで、それらは長い間、使用された形跡もなかった。
「お嬢さま(アツシー)、どうかお願いだから、少しでも食べて下さいまし」
懇願するソンジュの様子だけを見れば、香花が囚われの身で、ソンジュがその世話係だとは思えず、むしろ、その逆にさえ見えなくもない。
今、香花の脚許には粥の入った器と匙の載った小卓が置かれていた。むろん、粥はひと匙も手が付けられていない。
ここに連れてこられて、既に丸一日以上が経っている。今、自分が閉じ込められているのがそもどこなのか、香花にはおおよその見当がついていた。灯台下暗しというように、理蓮は香花を我が住まい―つまり県監の屋敷に隠したのである。
恐らく、今、監禁されている場所は、四阿からもかいま見えた物置小屋だ。現に、香花の推量が的中しているのを物語るかのように、狭い室内には石臼や鋤、鍬、大きな竹籠などが雑多に放置されている。最近はあまり出入りする者もいないようで、それらは長い間、使用された形跡もなかった。
