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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第17章 夢の終わり

 だが。
 彼の期待に反して、香花は家にいなかった。狭い家中を探し回っても、いない。
 光王は狂ったように外に飛び出し、隣の朴家はむろん、心当たりはすべて行った。その日の朝、朝飯を食べながら、香花が萬安の家に卵を届けに行くと話していたのを憶えていたからだ。
 そこでも、彼はまた気になることを聞いた。光王が訪ねた時、萬安は丁度、村長の家まで出かけていて留守だったが、彼の妻が教えてくれたのだ。
 丁度、奥で赤ン坊に乳をやっているところにも拘わらず、嫌な顔もせず、すぐに赤児を抱いて出てきてくれた。
「実は、少し前に変な人たちが来たんですよ。光王や香花のことについて色々と訊いてきて」
 その話が先刻の酒場の女将の話と妙なくらい符合している。

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