
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第17章 夢の終わり
「―大きなお世話だ」
光王は呟くと、片手を上げた。
「じゃあな、また」
「毎度!」
威勢よく返しながら、女将はうっとりと光王の後ろ姿を見送る。
「いつ見ても、惚れ惚れするほど良い男だねぇ。あたしがあと三十年、いや、二十年若ければ、冗談でなくモノにしてやるんだけど」
女将は白粉を塗ったくった顔をしわくちゃにして笑い、肩を竦めた。
一方、酒場を後にした光王は、嫌な胸騒ぎがしてならなかった。
―光王、光王ーッ。
先刻、女将と話していた最中、確かに香花の声が間近で聞こえたと思ったのだが、あれは一体、何だったのだろう。
本当ならまだ昼からもひと仕事するはずなのだが、今日はもう村に帰るつもりだった。
香花の無事なことを確かめれば、この不安もすぐに消える。
光王はそう自分に言い聞かせながら、急ぎ足で帰り道を辿り始めた。
光王は呟くと、片手を上げた。
「じゃあな、また」
「毎度!」
威勢よく返しながら、女将はうっとりと光王の後ろ姿を見送る。
「いつ見ても、惚れ惚れするほど良い男だねぇ。あたしがあと三十年、いや、二十年若ければ、冗談でなくモノにしてやるんだけど」
女将は白粉を塗ったくった顔をしわくちゃにして笑い、肩を竦めた。
一方、酒場を後にした光王は、嫌な胸騒ぎがしてならなかった。
―光王、光王ーッ。
先刻、女将と話していた最中、確かに香花の声が間近で聞こえたと思ったのだが、あれは一体、何だったのだろう。
本当ならまだ昼からもひと仕事するはずなのだが、今日はもう村に帰るつもりだった。
香花の無事なことを確かめれば、この不安もすぐに消える。
光王はそう自分に言い聞かせながら、急ぎ足で帰り道を辿り始めた。
