
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第17章 夢の終わり
光王は注文した飯もそこそこに、立ち上がった。
「毎日のように顔を出してるのに、何で今になって、そんな話をする?」
気になって問うと、女将は皺に埋もれた眼をまたたかせた。
「さっきも言っただろう。あたしは何もあんたに義理立てする筋合いも義理もないってね。たまたま、あんたの顔を見て妹の話をしたから思いだした、ただそれだけ」
「全く、喰えない婆さんだぜ」
笑いながら言ってやる。
「お互いさまだね」
女将も笑いながら返してくる。ふと振り向いた光王に、女将が不思議そうに訊ねてきた。
「どうかした?」
「いや、今、一瞬、あいつの声が聞こえたような気がして」
その科白に、女将が真顔で呆れた。
「あら、やだ。他人の前でそこまで惚気(のろけ)るんじゃないよ。光王、あんた、それだけ惚れてるのに、どうして、黙って指をくわえてるんだい。さっさと抱いちまいな。あんたほどのタラシが妹のこととなると、まるで一人の女を知らない男のようになっちまうなんて、ちゃんちゃらおかしいよ」
「毎日のように顔を出してるのに、何で今になって、そんな話をする?」
気になって問うと、女将は皺に埋もれた眼をまたたかせた。
「さっきも言っただろう。あたしは何もあんたに義理立てする筋合いも義理もないってね。たまたま、あんたの顔を見て妹の話をしたから思いだした、ただそれだけ」
「全く、喰えない婆さんだぜ」
笑いながら言ってやる。
「お互いさまだね」
女将も笑いながら返してくる。ふと振り向いた光王に、女将が不思議そうに訊ねてきた。
「どうかした?」
「いや、今、一瞬、あいつの声が聞こえたような気がして」
その科白に、女将が真顔で呆れた。
「あら、やだ。他人の前でそこまで惚気(のろけ)るんじゃないよ。光王、あんた、それだけ惚れてるのに、どうして、黙って指をくわえてるんだい。さっさと抱いちまいな。あんたほどのタラシが妹のこととなると、まるで一人の女を知らない男のようになっちまうなんて、ちゃんちゃらおかしいよ」
