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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第13章 十六夜の悲劇

「ごめん、格好悪いところを見せちゃったね」
 香花は微笑んだ。
「そんなことないわよ。誰だって、哀しいときはあるもの。泣きたいときは、気が済むまで泣いた方が良いの」
「―うん、ありがとう」
 景福は眼をこすりながら、はにかんだように笑った。そうやって笑うと普段は大人びた顔が年相応の少年らしく見えた。
 それからほどなく、景福は、その朝、取れたばかりの新鮮な卵を土産に町へと帰っていった。

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