
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第5章 永遠の別離
「判った。もう何も訊かない」
光王がやけにあっさりと引き下がり、香花は所在なげに視線をさまよわせた。
「これからどうするつもりなんだ」
突然、話題が変わる。香花は顔をうつむけたまま、緩く首を振った。
「判らない。自分でも、どうすれば良いか判らないの」
「とりあえず、都から一刻も早く出た方が良いぞ」
予期せぬ言葉に、香花は即座に言い返した。
「まさか。私は都を離れるつもりはないわ」
「どうしてだ? 今、お前たちにとって都が危険なのは判っているだろう」
香花は唇を噛みしめる。荒れているのか、上唇がささくれ立ち、血の味がした。
「旦那さまを残して、行けない」
「お前はあの男から頼まれたんじゃなかったのか? だから、厄介なことも承知で、二人の子どもを連れて屋敷を出たんだろう」
香花は頑なに口を引き結ぶ。
「惚れた男の最後の頼みを無視するつもりか? このまま都にいたら、あいつの子どもらは捕まって、巻き添えを食らうぞ」
光王が怒鳴った。その剣幕に、周囲の客がざわめき、光王と香花をちらちらと窺う。
その言葉に、香花は敏感に反応した。
「判ってる、判ってるけど―」
不覚にも涙が滲み、堪え切れなかった。
こんな男の前で涙なんて見せたくないと思うのに、どうしても泣けてくる。
「―酷なことを言うようだが、どうせ隠しておいても知ることだ。香花、崔明善が今日の昼過ぎに処刑されるらしい。罪状は大逆罪、明善の二人の子どもやお前にまで捕縛命令が出ている。見つけ次第、捕らえて首を刎ねろという王命が出てるぞ」
「―そんな、馬鹿な。桃華さまや林明さまには何の罪もないのに」
光王がやけにあっさりと引き下がり、香花は所在なげに視線をさまよわせた。
「これからどうするつもりなんだ」
突然、話題が変わる。香花は顔をうつむけたまま、緩く首を振った。
「判らない。自分でも、どうすれば良いか判らないの」
「とりあえず、都から一刻も早く出た方が良いぞ」
予期せぬ言葉に、香花は即座に言い返した。
「まさか。私は都を離れるつもりはないわ」
「どうしてだ? 今、お前たちにとって都が危険なのは判っているだろう」
香花は唇を噛みしめる。荒れているのか、上唇がささくれ立ち、血の味がした。
「旦那さまを残して、行けない」
「お前はあの男から頼まれたんじゃなかったのか? だから、厄介なことも承知で、二人の子どもを連れて屋敷を出たんだろう」
香花は頑なに口を引き結ぶ。
「惚れた男の最後の頼みを無視するつもりか? このまま都にいたら、あいつの子どもらは捕まって、巻き添えを食らうぞ」
光王が怒鳴った。その剣幕に、周囲の客がざわめき、光王と香花をちらちらと窺う。
その言葉に、香花は敏感に反応した。
「判ってる、判ってるけど―」
不覚にも涙が滲み、堪え切れなかった。
こんな男の前で涙なんて見せたくないと思うのに、どうしても泣けてくる。
「―酷なことを言うようだが、どうせ隠しておいても知ることだ。香花、崔明善が今日の昼過ぎに処刑されるらしい。罪状は大逆罪、明善の二人の子どもやお前にまで捕縛命令が出ている。見つけ次第、捕らえて首を刎ねろという王命が出てるぞ」
「―そんな、馬鹿な。桃華さまや林明さまには何の罪もないのに」
