テキストサイズ

月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第5章 永遠の別離

 香花はまだ恐怖に身を震わせながら、両脚を抱えて蹲り、顔を伏せて泣いた。
「ううっ、うっ、うっ」
 涙が溢れて止まらない。
「先生、泣かないで。先生が泣くと、私たちまで哀しくなるじゃないか」
 林明が涙声で言い、桃華もとうとう泣き出した。父が罪を犯し捕らえられたと聞いてからも、一度も人前で涙を見せなかった桃華の初めての涙だった―。
「先生」
「先生」
 近寄ってきた二人の子どもたちを引き寄せ、抱きしめながら、香花はいつまでも泣いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ