テキストサイズ

月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第5章 永遠の別離

 ヒューと口笛が聞こえる。視線を動かして、懸命に脚許を見ると、背の高い男がこれ以上は開けないというほど開かされた両脚の間に頭を突っ込み、中を覗き込んでいる。
「下もきれいだねえ、花のような色だ。間違いない、この娘は男を知らねえぞ」
 自分でさえ覗いたことのない場所を暴かれ、覗き込まれているのかと思うと、気が狂いそうになる。
 ふうっと生温かい息をその秘められた場所に吹きかけられ、全身が総毛立った。
―い、いやーっ。
 香花は泣きじゃくりながら首を振った。
 そのときだった。
「ツ」
 香花を押さえつけていた男たちが次々に声を上げて呻き始めた。
「先生から手を放しなさい」
「先生を苛めるな」
 桃華と林明が次々に固い石つぶてを投げつけているのだ。どうやら二人は香花が囚われている間、石を集めたらしい。それも大きな石ばかりで、それを間断なく力一杯投げつけてこられるのだから、たまらない。
「ウヘッ、止めろ」
「ガキのくせに、生意気しやがる」
 やがて、三人の男は石攻撃にたまりかね、悪態をつきながら香花から手を放した。
 ほくろの男など額にまともに石が激突し、割れて血が滴っている。
「憶えてやがれよ」
 男たちはこういう場合、大抵は負け犬が残してゆく棄て科白を吐き、這々の体で逃げていった。
 桃華と林明が駆け寄ってくる。
「先生、大丈夫?」
「大丈夫、先生?」
 桃華が口に銜えさせられた布を取ってくれ、林明が背をさすってくれた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ