
恋は甘い香りと共に
第1章 はじまり
母の手には真新しいYシャツ。
「父のだけど…染み付きよりはましだと思うの。あ、このシャツはこちらで責任もって洗わさせて頂きます」
「…大丈夫です」
「そんな!駄目です。後日この子に届けさせますので。とりあえずこちら着て下さい。多分サイズは大丈夫だと思うのですが…。あ、新しいので心配しないでくださいね」
次々飛んでくる母の声に若干逃げ腰な藍川湊人。
あー引いてるな。
「お母さん、大丈夫だから」
「駄目です。もとはあんたが悪いのよ」
「はいはい」
奈津美ちゃんのことは言わなかった。
言ってもしょうがないし。
それより、置いてきてしまった彼女は今どうしてるだろうか。
あんな注目を集めてしまった中で…
