
恋は甘い香りと共に
第1章 はじまり
「大体ここの従業員は動きが遅すぎる。呼び鈴鳴らしてもなかなか来ないし、待ってる人がいるのに片づけられていないテーブルが目立つ。こんなんじゃこの先駄目だよ」
一気にまくしたてられた言葉が私を貫いた。
「ちょっと湊人!何言ってんだよ!」
「そうだよ!ごめんあらしちゃん」
………でもこの人は間違ったことは言ってない。
従業員の動きが悪いというのは事実だ。
この春できたばかりだと言ってどこか甘えてた気がする。
お父さんのケーキがあるから自然にお客さんは来るだろうって。
頭から冷水をかけられたようだった。
「お客様、不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。ご指摘をありがとうございます。これから精進していきますので今後ともよろしくお願いします」
藍川湊人に、3人に、お客さん全員にむかって頭を下げる。
