テキストサイズ

もしも、君を愛せたならば

第38章 欲しい

亜矢の家の前まで送ると
玄関先に亜矢の母さんが出てきた。


「あらー?
 シン君、今日はクルマなの?」


「あー、これ姉貴のです!
 ちょっと遠出してて・・・

 すいませんッ」


「なんで〝すいません〟なのー?
 シン、変なのー!!」


そう言いながら
亜矢は車を降りると、
いつもと逆の左手をチラチラと振って
口パクで〝ありがと〟そう言った。



「シン君・・・

 ありがとうね」



亜矢の母さんは、
微笑んだような、
真面目なような、そんな表情で
俺にそう言った。


なんだか意味深に感じて
俺も真面目に返事した。


「はい・・・じゃあ、また」




二人に見送られて
俺はゆっくりとアクセルを踏む。

さっきまで軽かったアクセルは
急に重くなった。

亜矢の母さんに
あんな風に言われて
少し緊張した自分がいた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ