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精霊と共に 歩睦の物語

第5章 花火を見るって大変

   ***

 人ごみを縫うように進む大人の人の背だけを見ながら、足早に屋台の賑わいを抜けていく歩睦。

大人の人が止まって、横にずれ頭を下げた。
 歩睦は直ぐそこに歩いている遥香を見つけた。

「歩睦さま…我々はここまでです。どうぞ…」
 頭を上げずに片手を出す。

「そうですか…わかりました」
 歩睦は大人の人の横を通る。

「ありがとう…ご…ざい…、あれ?居ない…」
 歩睦がお礼を言うつもりで、大人の人の方を向くと、その場に居なかった。

「あの人たち…忍者みたい…」
 キョロキョロと周りを見ている歩睦。

「あ!歩睦!どこまで行ってたの!心配したよ」
 遥香は、ウロウロしている歩睦に駆け寄る。

「ごめんごめん、ちょっと逃げすぎて迷った…かな?ははは」
 とりあえず笑ってごまかす歩睦。

「えー本当ー?」
 遥香は疑いの目で見ている。


  ドーン バァン

 大きな花火が夜空に上がる。

「わー、綺麗!」
「始まった!!」
 子供達の歓声が聞える。


「始まったね」
「そうだね」
 歩睦と遥香はその場で夜の空を見上げる。

ドーン バリバリ
 牡丹や菊先の花火が夜空を彩る。


「綺麗…」
 遥香が次々と上がる花火を見て、感想を小さく言う。

「………」
 歩睦は遥香の顔や姿をジッと見ている。
(浴衣着てるだけなのに…女の子って変わるなー)

「…なに?」
 遥香が、空を見上げながら言う。

「え!いや…その、なんだ…」
 見ていた事を気がつかれて慌てる歩睦。

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