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精霊と共に 歩睦の物語

第5章 花火を見るって大変

     *

 楓はお面の子を追って走りながら、歩睦を心配している。
(歩睦…ちゃんと逃げれたかしら…)


 先頭を走る歩睦の姿をしたワーンが走りながらポイントポイントに結界を張っていく。

「ねー、ちょこちょこ逃げないで、私とお話しよぉ」
 お面の子がアユムに追いつく。


「…ここで…完了!」
 アユムが走るのをやめる。

「鬼ごっこは終わりなの?」
 アユムと距離をつめるお面の子。


「…そうね。もういいわ!」
 楓が直ぐ後ろに立っている。

「あー…お兄ちゃんもきたの?」
 チラッと楓を見るお面の子。


「来たの?じゃ無くて囲われたのよ!『結界』!!」
 小さな結界を軸にして、大きな結界が完成した。

「あ!」

 空間が外界から隔離された。

「ちょっと!いつの間にこんな結界張ったのよ!お兄ちゃんは…あ!まさか!!」
 お面の子がアユムの方を向く。

 アユムは元の姿のワーンに戻る。

「やっぱり、また。低級!!」
 お面を外し、地面に叩き落す。

 ワーンは楓の足元に戻ってくる。

「お疲れ」
 アゴの下を掻いて上げる。

「さて、君は『モンダミン』だね」
 北米の民族が信仰しているトウモロコシの精霊の名前を告げる。

「そうよ!だから何?」
 明らかに動揺しているような幼い顔つきの精霊。

「今日はちょっと、人が多すぎで対話はできないのよ。だから、このまま排除よ」
 楓の周りにたくさんのワーンが集まっていく。


「…我に従順な従者よ、目の前の迷いし『モンダミン』をあるべき所へ返せ」
 植物の蔓のような物がモンダミンの身体に巻きつく。

「ああ、やめて!力が抜けていく…いやよ、私は土の者に…」
 モンダミンは消えていった。

「……ワーンもういいわよ」
 ワーンも姿を隠す。

「さて、私も歩睦の側に帰らなきゃ!」
 浴衣をススッと調えると走り出す、楓。

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