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掌の浜辺

第1章 春 - story -

27.その場所

 学生たちは頷く。
 「どんな覚え方でも構いません。ただ、私が熟語を言ったあとすぐそれを紙に書くというのだけはやめて下さい。お願いします。それでは行きます」
 目をつむる学生、シャ-ペンを握りしめて瞑想する学生、机に向かってうつむいた学生など、それぞれの覚え方で攻めていく。

 「地震」
 2秒ごとに熟語を言っていく先生。
 「図形」
 「大声」
 「時間」
 「透明」
 「世代」
 「振動」
 「街中」
 「果物」
 「物質」
 「銀色」
 「自然」
 「起立」
 「単位」
 「実験」

 終了。これで全15語の発表が終わる。シ-ンとなった教室。そして5秒たったあと先生は再び口を開く。
 「はい。では、今からあなたが覚えている熟語をその紙に書いていって下さい。スタ-ト」
 カキカキ
 やっていない学生もいるが。
 30秒たった。ここから徐々に書くことを止める人が増えていく。
 1分後。その人数は結構増えてきた。
 1分半。ほとんどの学生が雑談をしている。でもまだ若干やっている人はいる。
 3分経過。もうやっている人はいない。先生は立ち上がってマイクを握りしめた。
 「いいですか?」
 ざわつきは、やまない。
 「いいみたいですね。では、答え合わせをしていきましょう」
 何呼吸か置いて、先生は口を開く。それと同時に、黒板に字を書いていく。

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