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掌の浜辺

第1章 春 - story -

 【ペリ-】
 この字を見てぽか-んとする人、にこやかになる人、全く気にせず友達との雑談を続ける人、睡眠体勢に入った人、授業ノ-トをとっている人、内職している人、マンガを読んだりケ-タイを見たりしている人、様々。でもこの先生は何も言わない。大学生は忙しい、あと人それぞれ事情がある、と言って。
 「じゃ、ペリ-から連想するものを言っていきましょう。一番目の学生さん」
 と言って、先生は彼女にクッシュボ-ルを弧を描くように優しく放り投げた。
 「え?え」
 戸惑う。
 「ペリ-って聞いて何を思い浮かべましたか?」
 「え、黒船?」
 「はい、隣の学生さんにボ-ルを渡して下さい」
 「はい」
 (これでいいの?)

 「黒船と聞いて連想するものは?」
 「海賊です」
 「はい、隣の学生さん」
 「バイキング」
 「バイキング…食べ放題!」
 「肉」
 「焼く」
 「焼くぅ?火」
 「火は…赤い」
 通路をまたいで左隣の人にマイクとクッシュボ-ルを手渡す。
 「こっちでいいんですか?」
 「はい、結構です」
 「赤い、りんご!」
 「りんごわぁ果物」
 「果物っつったら甘い?」
 「え?何なに?聞いてなかった」
 「甘いと言えば?」
 「え-。甘い、と…砂糖とか?てかこれどうすんの?」
 「隣に、あ、いね-か。後ろの人に渡して」
 「はい」
 「紅茶」
 「温かい」
 「風呂?」

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