
俺はもう、
第3章 *宣戦布告..
「河野くん、ごめんね。
急遽パパが帰ってくることになって、さっき日本に着いて今から家に向かうって。だから今日のところは帰ってもいい?ほんとにごめんなさい。」
「お父さんはいつまでロンドンにいるの?近いうちにこっちに住むんだよね?」
「一緒に住むのは半年先かな。」
「そっか。
じゃあ、その時には挨拶させて?今後のこともあるし。」
「うん、そうだね・・・。」
作り笑いしかできなくて、それを誤魔化そうとカバンを持って玄関に向かった。
「大丈夫?送ろうか?」
「ううん!タクシー拾うから平気!
またメールするね!」
「うん、気を付けてね!」
家を出るとアパートの階段を駆け下りて、近くの交差点を左に曲がった。
ここの電信柱の陰なら河野くんの部屋からは見えない。
「優?私、今・・《見っけ!》
電話の優の言葉と同時に顔に当てられた車のライトで思わず目を細める。
徐々にスピードを落とし、目の前で止まった車から優が顔を出した。
「お待たせ」
「いつの間に免許とったの?」
助手席に座ると同時に質問する。
「去年。チャリの方が良かった?」
「ううん。車がいい。」
「さすがお嬢様。」
「なにそれ。嫌味?」
「いや、本人の前で悪口。」
「もっと最低。」
優の格好を見ると家を飛び出してきたんだってわかる。
髪も濡れてて、ハーフパンツにTシャツ、サンダルで運転する優が無性にたくましく見えた。
「ごめんね。わざわざありがと。」
「こんな暗闇で一人で帰せないだろ?」
「その前。電話くれたこと。」
「あ?あぁ。そっちか。」
「心配だった?」
優の顔を覗き込み、ちょっと意地悪く質問してみる。
「アホか。誰が心配すんだよ。」
ハンドルを握りながらチラッと玲奈を見た優は軽く鼻で笑った。
