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RAIN

第4章 再会《翔side》

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珍しく雨は降っていなかった。
そして珍しいことは天候だけではない。


「翔、どうしたのよ!?」
朝から姉貴の声が神崎家に響いた。
姉貴の隣でお袋も狐に化かされたような顔で立ち止まっていた。
朝の六時ちょっとすぎ。いつもならまだ夢の世界でさまよっているはずの俺が、今は現実の世界で二人の前に顔をだしている。俺は寝起きが悪く、いつもは二人に叩き起こされる。
それが今日は二人に起こされるどころか、アラームさえその役目を果たすことなく自らの意思で早起きできた。

朝食の用意をしていた二人は俺の姿に心底驚き、何度も瞬きをしていた。
さすがに居心地悪いと朝からの牛乳を口に流し、食卓の定位置に腰を下ろす。
「俺、学校に早く行かなきゃいけねえから飯早くくんない?」
ぶっきらぼうに言えば、やっとお袋は我に返ったように動きを再開させた。

姉貴は何度も俺の顔を覗き込みながらぶつくさ何か言ってるが、俺はいつものように無視。
お袋が俺にご飯を渡し、俺の向かい側である所定位置に座る。
「あんたが珍しく早起きしたから、雨も驚いて降ってないのね」
クスクスと笑いながら、くだらない冗談を口にした。



「じゃあ行ってくる」
朝食を軽くすませ、すぐに外に出る。
三人の中で一番早く出て行く俺に、姉貴は最後まで驚きを隠せなかった。


俺が早くに家を出た理由。それはあの公園に向かうため。もしかしてあの人がいるかもしれない。傘を返すために俺を待ってくれてるかもしれない。……いや、それは俺の都合だ。そうであってほしいという自分勝手な都合。
だけどあの人なら待ってくれるかもしれない。そんな期待感に縋っている自分がいた。

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