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RAIN

第4章 再会《翔side》

姉貴からの疑問に俺はすぐに答えることが出来なかった。
そんな俺に姉貴はじっと見つめていた。

俺はなんて答えればいいか思案してしまう。
だけど何か言わないと、姉貴が変に勘ぐってしまう。


「傘、貸したんだ」
「……え? 貸したの?」
とっさに出た返事は無理があったのは否めない。
「そうだよ! 傘忘れたっていうから貸してやったんだよ!」
これ以上追及されるのは厄介だと、牛乳を途中にしてそそくさと台所から去っていく。
「……え、翔?」
姉貴にしたら俺の行動は理解に苦しむものだったようで、俺を呼び止めるが俺は姉貴から逃げるように自分の部屋に直行した。




バタンッ。ドアを閉めて寄りかかる。

何であんな嘘をついてしまったんだろう。
素直に公園で会った人に傘を渡したといえばいいだけじゃないか。何も疚しいことなんかしてない。悪いことじゃない。
なのにとっさに出た言葉は半分の嘘。あの人に触れさせないための、偽りの言葉。

ハァーッと深いため息一つつくと、ベッドへと身を委ねる。


「……ったくめんどくせー……」
口にすれば疲労が押し寄せてくる。

だけどすぐに雨の中の君を思い出し、胸が熱くなって、心臓はどきりと大きく跳ねる。

「もう一度……、明日会いにいこう」
傘なんて別にどうでもいいが、もう一度あの人に会いたい。

自分の中で纏まると、俺は夕食が出来るまでの間、惰眠をとろうと瞳を閉じた。


あの美しい彼に会えますように……──

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