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異種間恋愛

第20章 契約の内容

 ラドゥ様はそこに目をつけたみたいだよ。アッシュが作られるようになってから連れて行かれたまま戻ってこない民の数が増えているらしいことも調べていたみたい。
 ここ数日で急にそんなことを調べていたんだ。
 リア、ラドゥ様に何か言った?」



 首を傾げて天井を見上げる。
 ラドゥには怒りにまかせて色々言い過ぎて正直何を言ったのか頭が記憶していない。
 民を駒だと言った彼の頬を引っ叩いて、それからラドゥに床に組み敷かれた。
 突然、頭が運動し始めてラドゥの声が響いた。
『労働者たちにはその知恵と力が尽きるまで働いてもらわなくてはもったいないだろ。別に殺しているわけではない』
 確かそう言っていた。
 殺しているわけではない。知恵と力が尽きるまで。
「連れて行かれた民がどうして戻ってこないのかって聞いただけよ」
 ストラスは何かに納得したように小さく息を吐き出した。
「そうか。ラドゥ様は民が村に戻っていない状態を把握してなかったんだよ。だから、リアが訴えかけて不審に思ったんだろう。どうせ、王子のことだ。リアには動揺を見せることなく傲慢で極悪非道な王子様でも演じていたんだろうね」
 ラドゥは知らなかった?
 当然のことのように民を駒と言い放った彼の顔を思い出そうとしても浮かんでこない。
 ラドゥは私の言葉に疑問を感じて体調が悪いのも構わず仕事の合間を縫って調べていたというのだろうか。
 まさか、あの王子が?
「でも、駒だって。ラドゥは民は駒だって言ってたのよ。それに、もうすぐ自分は消えると分かっていながらどうしてそんなことを調べる必要があるの? もう関係がなくなることじゃない。ラドゥにはなにも利点がないわよ」
 ラドゥがよく言う『利』だ。人はみんな損得で動いていると考えているラドゥが他人のために動き回るはずが……ない、じゃない。
 あれ。
 本当のラドゥの姿を私はまだ見ていないんじゃないか。
 ストラスが瞼を閉じて首を横に振った。
「ラドゥ様は僕たちが思っていたよりずっと心優しい方なのかもしれないね……。でも、それに気が付いている人は国中を探してもいるかいないか…………いないんじゃないかな」
「こ、どく……ね。あっ! ストラ、ラドゥのお母様のこと知ってる?」

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