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異種間恋愛

第20章 契約の内容

 ラドゥが寝言で口にした言葉が気にかかっていた。
 ストラスなら知っているかもしれないという私の期待は裏切られなかった。
「また急に変なこと聞くね。……確かラドゥ様が幼い頃に姿を消したとか。もう亡くなっているという噂も遠い国へ逃げて暮らしているという噂もあるけれど」
 私は似ている。
 思わずそう感じてしまう。
 ラドゥの場合はフェリクスというお父さんはいるけど、王として忙しいし居て居ないようなもの。むしろ、私にはストラスのお母様、お父様がいてくれたから恵まれていたと思う。
「逃げてってどうして?」
「……フェリクス様は何故かラドゥのお母様にきつくあたられていたようだよ。ラドゥ様のお母様はとても美しく、気立てもよくて誰からも愛されるような女性だった。ラドゥ様を産んでからも大事に育てていらっしゃったみたいだけど、突然姿を消したんだ。その理由を知る者はいないと」
 突然、可愛いわが子を捨ててしまう母親の心理が私にはまったく分からない。そもそもまともな結婚も子供も持ったことのない私に理解できるもののほうが少ないと思うけれど。
 ラドゥはどうだろう。
 母親が消えたことをどう思っているのだろう。
 寝言で言うくらいだ。心の底では愛に飢えた小さな石が転がっているような気がする。
 その石は小さいのにとても重く、そして体を少し動かす度に臓器という臓器全てに絶妙な違和感を与えるだろう。
「……そう」
 それ以上、ストラスにも分かることはないだろう。
 私は礼を言うとストラスから離れようとして、彼の異変に気が付いた。
「ストラ、どうしたの」
 いつも爽やかな微笑をたたえている彼が今はとても暗くうなだれていた。
「レオン様の次はラドゥ王子か……。リアを独り占めできる日は来るのかな。それとも、もう来ないのかな」
「ストラ」
「僕ならレオン様のようにリアを簡単に手放したりしない。それに、ラドゥ様のように乱暴にも扱わないよ。僕なら……君を、ずっと」

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