テキストサイズ

異種間恋愛

第20章 契約の内容

 ストラスは私の目を見ると、同じように真剣な目になった。
「国中から集められてきた民が一体どうして家に帰っていないのか。その数と行方をね」
 意外すぎる言葉に私は目をまるくした。
 王子なら全てを知っていると思っていた。それに、あの時ラドゥも全てを知っているように振る舞っていたじゃないか。
 ストラスが灰色の瞳を隠すように瞬きをした。
「ここじゃあまり深くは話せないね。部屋に来てくれるかな」
 私は眠っているラドゥに目をやって素早く頷いた。
 ラドゥは当分起きないだろうし、それよりなによりもストラスの話が聞きたい。ラドゥはなぜそんなことを調べていたのか、そして真相はどこにあるのか、誰が黒幕なのか。

「どうぞ。座って、って言っても僕の部屋じゃないんだけどね」
 私はその言葉に逆らうように立ったまま首を振った。
「早く、教えてほしいの」
 ストラスは大きく息を吐き出して話し始めた。


「今日、僕が王子に頼まれた仕事に行ったとき他国の王子に聞かれたんだ。民の行方は分かったか? 王子は今も熱心に調べているのか? ってね。
 最初は僕もなんのことか分からなかったよ。でも、手渡された資料をよく見てみるとそこら中に意味の分からない走り書きや数字が書かれていて、気になって調べてみたら、どこの村でいつ何人がラーナへ連れてこられたかを記録していたんだ。
 それに資料は最近のアスリアス王国が発明した機械や工具、それに石についてね。この石っていうのは新しいエネルギーを生むもので、アスリアス王国が作りだすことに初めて成功した。
 アスリアス王国ではこういう発明品が大量に生み出されていて、それが国益につながっていることは知っているよね?
 発明されすぎていて他国の科学者や王族も怪しむほど。その秘密を僕は連れて行かれた有能な若者たちの能力で、だと思い込んでいた。
 うん。そう。
 違うんだ。
 それにしてはあの石が出来たのが早すぎる。アッシュは……あの石はアッシュと呼ばれてるんだけど、あれは大分昔から隣国や海の向こうの国々でも研究されていた。アッシュの形に完成するまでは何世紀も後だと考えられていた。それを研究に遅れていたアスリアス王国がやすやすと完成させた。グラド様の代からどんどん研究が進んで、今では少量だけど生産工場ができるくらいになっている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ