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異種間恋愛

第14章 導かれた青年

 白い馬の背が揺れる度、僕の頭がずきずきと痛む。それと同時になにか大切なことを思い出せそうな歯がゆい気持ちが広がっていた。
 きっとそれはリアと森にいた時のことだ。思い出そうと思えばその記憶は雲のように掴めないものになってしまう。もう一度、手を伸ばす。手が空を掴む。その繰り返しでなにも得るものがなかった。
 早く思い出した方がいいのか、思い出すという行為によってこれからの行動が左右されるとは到底思うことができない。
 リアを探し出し、連れ帰る。
 これは僕の願望であり義務であり、またリアの希望でもあるはずだ。そこに疑いは少しも感じない。
 リアは僕を待っている。
 じゃあ、どうしてリアは姿を消したのだろう。わからない。自分の考えが自分勝手で馬鹿らしい幼稚なもので呆れた。
 リアが姿を消したのに僕を待っているはずなんてないじゃないか。僕から離れたくなったのかもしれないというのに。では、僕が彼女を見つけ出そうとしているのは彼女にとってどう映るのだろう。
 辺りはもう真っ暗になっているけれど、暗闇に慣れた目が微かな色の濃淡を認識して僕に道を教えてくれる。ビビアンは町に置いてきた。
 普段では考えられないような速度で走ることを命令しているからか馬は時々ためらうように速度を落として僕の反応を窺うのが分かった。大丈夫だよ、と言いながら背中を撫でてやると再び四本の脚をせわしく動かしだす。
 できるだけ早くラーナに着きたい。
 リアがいなくなってから随分日にちが経っている。いくら小さなリアでももうラーナに着いていると考えるのが普通だ。ラーナのどこに滞在しているのだ。
 王族だということをリアが自分から言うはずはないだろう。と、なれば民家に?
 よい人たちに当ればいいが、もし男に囲われていたら……と思うと途端に気が気ではなくなった。
 左手で手綱を持ったまま右手の指を口に含んで息をふき出した。

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