
いつもそこには、君がいて
第2章 2 水曜日
福田さんに背を向けたまま、私はさらに数歩進んだのだけれども、その足を止めたのは、福田さんのこんな声だった。
「いいんじゃないですか、たまには泣いたって」
優しい言葉をかけられるなんて、しばらくなかったから……つい、甘えてしまいたくなる。
「俺、ここにいますから」
福田さんはそう言うとすたすたと近付いてきて、風が吹き込んでくる私の右側に立ってくれた。
それだけで、とってもあったかかった。
誰かがそばにいてくれることを、こんなに大きく感じたのって今までなかったかもしれない。
「……ありがとう……ございます」
あまりに小さい私の声は、福田さんに届くまでに少々時間がかかったみたいで。
――ポン、ポン……ポン
うつむいた私の頭に大きな手が触れたのは、受け答えにしてはちょっと時差があるかのような、ぎこちない間合いだった。
