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ブルースカイ

第10章 恵(中)

タバコの火を消して着信履歴を見ようとした時、電話が鳴り始めた。



俺はタバコの火を消しながら、電話を取る。



「もしもし。誰や?」



「えっ?あの、聡やんな?」



「ああ、麻里か。タバコ吸うてたから、表示見ずに電話取ってん。」



「あっ、声だけでわかるんや♪」



少し嬉しそうな弾んだ声。



「麻里に限らず、よく電話する奴の声は覚えてるわ。」



流石に鈍感な俺でも、明らかに喜んでいる相手に水を差すのは心苦しい。しかも、原因は俺の言葉足らず。



俺自身も恋をすると些細な事で舞い上がるため、痛いほど気持ちがわかる。



「あっ、そうなんや。」



少しがっかりした声。言わんですむなら言いたくはないけど。



「ただ、特別よう話してるんは、間違いないな。」



どっちとも取れる発言。フォローになってない。二股は嫌だが、好かれたままでいたいという煮え切らない打算。

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