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温もり

第3章 殺処分

 それを思い出した二一三は陰鬱な気持ちを吐き出そうと小さくため息を吐く。

「ごめん」

 ポツリとそうとだけ言って、食堂の方に向かった。
 零九とニニの部屋が一番奥のため、二人を起こせば後は戻るだけなのだ。寝ぼけているLL達の間を歩いて行く後姿を見送り、零九は後ろを見る。
 彼女は服を着ていたが、気持ちが沈んだままで、しかも寝不足も相まって、酷い倦怠感にベッドに横になっていた。

「ニニ」

 声をかけると一度こっちを見てから目を閉じた。
 食堂に行かないとみんなが心配する、と零九は彼女を連れ出そうと近づく。

「零九」

 ニニの手を掴もうとした彼の手は彼女の声で止まる。
 ゴロリとベッドに仰向けになり、零九を見上げる。

「殺して」

 その言葉は真剣で、零九は戸惑いの表情を一瞬だけ浮かべる。突然言われても出来る事ではなかった。

「まだ、出来ない」

 本当は一緒にずっと生きていたい、と思いながら零九は答える。いざとなれば、と言う覚悟は出来ているが、今は出来なかった。

「ねぇ、本当に私を殺してくれるの? 置いていかない?」

 不安げに彼女は問う。
 彼の命が残り少ないと知ってしまい、彼の死のイメージが頭から離れない。一人で生きても、研究所の中に居る以上、何も出来ない。

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