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温もり

第3章 殺処分

 二人はそのまま裸のまま抱き合って夜を過ごした。眠りはしても不安に襲われて目を覚ましてしまい、殆ど眠れなかった。
 温かい体温が、いつの間にか冷たくなっている、そんな想像にニニは零九の唇を求め、彼は不安がる彼女に何度も何度も応えた。



 数時間が経過し、コンコン、とドアをノックする音が聞こえる。早起きな二一三の三零がみんなを起こしに来たのだ。

「起きた」

 いつもはニニが答えるのだが、一晩中泣いていた彼女が答えられるはずもなく、零九が答えた。

「大丈夫?」

 二一三はドアの向こうから話し掛けて来た。零九が答えたのがそれほど珍しかったのだ。彼はニニの頭を撫でて落ち着かせ、服を着て電気を点ける。
 それから一度自分を落ち着かせようと軽く深呼吸をしてからドアを開ける。

「ニニは? 大丈夫?」

 零九よりは背の低い二一三は彼を見上げて再び尋ねる。彼はチラリと後ろを見ると、服を着ようとしているのが見えた。

「一二が死んでから、落ち込む事も増えたんだ」

「一二と一三はよく騒いでた」

 その二人と、あと一五はナンバー一五零の中で目立つ存在だった。
 殺処分で気が沈んでいる周囲を励まそうと騒ぐ一二、元より物をよく壊す一三、驚かせると必要以上に驚く一五、そんなトリオの漫才は日々行われ、最終的には零一が三人とも叱り、黙って見ている零九も怒る、と言うのがパターンだった。
 だが、今はその四人もいない。声を上げて笑っていた三零もいなくなり、二二も最近は笑わなくなった。

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