
温もり
第3章 殺処分
零九はニニの泣き声を聞く。泣かせたくない女の泣き声は聞くだけで胸が痛くなる。
「……ニニ……」
引きずり込まれる強い睡魔に抵抗しながら零九は彼女を呼ぶ。泣かないで欲しい。せめて、自分の事で彼女を泣かせたくはない。
ニニは自身のすすり泣く声に彼の声が掻き消され、目を覚ましたとは気づいていない。
「零九……起きてよ……起きて、ねぇ」
自分を求めて泣くニニに応えようと零九は必死に瞼を開く。眠すぎて泣いている彼女の声も夢なのか現実なのか解っていない。ただ、どちらにせよ泣いている彼女を放っておくことはできなかった。
「零九?」
薄くでも開いた目にニニは気づく。零九は気づいてくれた事にまずホッとし、自分は大丈夫だと示そうと彼女に手を伸ばす。
濡れた頬に骨太の指が触れる前に、女の白い手がそれを握る。慰めたかったのに、励まされた気分になりつつ、それでも彼女が安心したようにその手に頬擦りしたので、そこからようやく彼女の涙を拭う事が出来た。
「独りにさせないよ。安心して」
うなじに手を這わせ、軽く引くとそれに従って彼女は零九の腕の中に入って来る。
両腕で彼女を抱き、彼女も彼に抱きつく。
「愛してる」
愛を囁いても、どこか空しく響く。
互いの体温を感じられる時間は残り少ないと解ってしまった。
「……ニニ……」
引きずり込まれる強い睡魔に抵抗しながら零九は彼女を呼ぶ。泣かないで欲しい。せめて、自分の事で彼女を泣かせたくはない。
ニニは自身のすすり泣く声に彼の声が掻き消され、目を覚ましたとは気づいていない。
「零九……起きてよ……起きて、ねぇ」
自分を求めて泣くニニに応えようと零九は必死に瞼を開く。眠すぎて泣いている彼女の声も夢なのか現実なのか解っていない。ただ、どちらにせよ泣いている彼女を放っておくことはできなかった。
「零九?」
薄くでも開いた目にニニは気づく。零九は気づいてくれた事にまずホッとし、自分は大丈夫だと示そうと彼女に手を伸ばす。
濡れた頬に骨太の指が触れる前に、女の白い手がそれを握る。慰めたかったのに、励まされた気分になりつつ、それでも彼女が安心したようにその手に頬擦りしたので、そこからようやく彼女の涙を拭う事が出来た。
「独りにさせないよ。安心して」
うなじに手を這わせ、軽く引くとそれに従って彼女は零九の腕の中に入って来る。
両腕で彼女を抱き、彼女も彼に抱きつく。
「愛してる」
愛を囁いても、どこか空しく響く。
互いの体温を感じられる時間は残り少ないと解ってしまった。
