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温もり

第3章 殺処分

 零九は倒れ込み、ニニに覆いかぶさる。

「れ、いきゅう?」

 苦しい程の荒い息に、力の入らない声で突然倒れた彼を呼ぶ。快感が頂点に達したと言うにはその感触がない。

「ねぇ……どうしたの?」

 今まで亡くした兄妹を思い出し、ニニの声は不安に震える。
 突然眠るや高熱と言った症状は彼女からすればイコール死だ。たった二人になってしまった寂しさはあるが、それでもその残った人が零九で良かったとどこかでニニは思っていた。

 零九が居なくなってしまう。
 その恐怖は計り知れない。自分が死ぬ事よりも恐ろしい程に。

「零九、起きて……」

 態勢を変えよう、彼をゆり起こそうとニニは彼の下でもがくが、背も高く、体格も良い彼をなかなかどけられない。

「お願い、起きて。ねぇ起きてよ! 私殺してくれるんじゃなかったの!?」

 彼の背中を叩いて叫んでも、彼から反応は無い。
 ニニは何とか彼の下から抜け出し、眠っている彼の顔を叩く。それでも反応は全く無い。

「起きて、お願い起きて! ねぇ零九起きてよ」

 ニニは必死に叫び、彼を起こそうと揺する。
 独り取り残される恐怖は、想像するだけで身も凍る程。よっぽど死ぬ方が彼女にとっては身近で、想像しやすかった。

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