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第26章 case10 【私ハ貴方ノ手ヲ握ッテ】 3

立ちっぱなしの足の重心を右から左へ移行させる為、少し左足を上げ、下したら。

何か踏んだらしい。足先が少しだけ予想外の方にぐにっと少し動いた印象。

先ほどまで揺れていたので、床には細々と物が落ちている。

何も考えて無かったけど、靴履いたままで正解だったかも・・・。

と、踏んだ感触に対して思っていた、が。

同時に、パキンッという音を響かせていた。

それは小さな音。部屋の中の2人には全く聞こえないどころか、

何かを踏んだと自覚した絢乃でさえ気付かなかった、小さな小さな音。

その音を拾ったのは・・・。

部屋中に斎の命令が染み渡っているのを自覚した、とある物体。

入口付近に倒れ伏し、血を流し動かない筈の・・・かつて人間であった屍は、

食い入るように部屋の中を見つめる絢乃に向かって、

ソロリ ソロリとほふく前進して、

右手を伸ばし、絢乃の右足首を・・・。

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