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第16章 case7 【貴方ニ引キ摺ラレル】 1

・・・だけど。

「ただの知り合いじゃないでしょう?」

斎が単なる知り合いを、自由にさせる訳が無い。そんな気がする。

「絢乃チャンが、斎の弱点であるように、俺もそれなりに役割はある、が」

「が?」

均さんは煙草を吸う。赤い火が点滅し、今度は上に向かって煙を吐き出す。

「今日はここまでにしとこうか。俺の情報が欲しいなら」

「欲しいなら?」

食堂のテーブルに置いてあった灰皿に煙草を押し付けると。

「・・・そうだな。ここにいる間、俺の仕事を手伝ってもらおうか」

「私は何も出来ない」

咄嗟に予防線を張る。斎がらみで私に関わる人物はどこか怪しいこともある、と学習したから。相手は黒田生徒会長で。

「心配ない」

ただ、予防線を張ったところで、男が聞く耳を持つわけもなく、左腕を素早く伸ばしてきて、

「離してッ」

腕を捕まれ、ずるずると何処かへ引き摺られていく。ジタバタもがいても、何故か斎も的場君も永依さんも、それどころか誰にも会う事は無かった。

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