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第3章 case2 【貴方ガ欲シイ】 1

「早く。斎様が来る前に済ませたいの」

いつき、さま?

びっくりした。話は彼の事についてらしい。彼と私の関係は誰にも知られていないと思っていたから。

「早くして」

急かす目の前の彼女に、仕方なく続くことにした。久しぶりの、第2図書室。相変わらず、古びた本の匂いが支配する静寂の部屋。

彼女がドアを閉め、部屋の中央に私。奥には例の開かずの扉があるけど、どちらにしろ行き止まり。

唯一の脱出口は、彼女が抑えている。

・・・逃げ場はない。

諦めて溜息を一つつき、目の前の彼女を見た。明らかに好意的ではない目つき。睨まれている。

「斎様から離れなさい」

そして、彼女の第一声がコレだった。

「離れるも何も、私の意思でいるわけじゃ・・・」

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