
山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第9章 生まれ変わる瞬間
身体がやけに重く感じられ、凛花は苦悶に悶えた。水の中にいるときのように、呼吸がままならない。先刻、夢を見たと思ったけれど、では、やはり、まだ夢の続きを見ているのか。
夢では確かに自由に動けるようになったのに、何故、こんなにも身体が重たいのだろう?
怪訝に思いながら眼を開くと、まだ靄がかかったように視界がぼやけている。痺れ薬がまだ効いているのだろうか。身体は相変わらず熱いが、それでも意識を失う前ほどのことはない。
意識が次第に冴えてくるにつれ、瞳に映るものの輪郭も明確になり、はっきりとした形を取り始めた。長い翳を落とす睫を細かく震わせ、凛花はやっと完全に覚醒した。
刹那、凛花は声を上げた。まさに、凛花には夢で見た光景そのものの再現に思えた。
趙尚凞が凛花の身体に覆い被さっている!
―どころか、尚凞は凛花の胸と胸の谷間に顔を埋めていた。凛花といえば、今更だが、一糸纏わぬあられもない姿で横たわり、尚凞の方も上半身は何も付けていなかった。
尚凞の瞳は爛々と異様な輝きを増している。その粘着質な視線は、乳房の薄桃色の先端に注がれていた。
尚凞が堪りかねたように顔を動かし、乳房の先端を口にすっぽりと含む。片方の手は嫌らしく空いた乳房を揉みしだき、まるで赤児が母乳を吸うように、くちゅくちゅと音を立てて一方の乳房を吸う。
生温い口も、淫らな水音も、すべてが厭わしく気持ち悪い。
凛花の瞳に涙が溢れた。
涙の膜に曇った瞳を動かすと、布団の傍に凛花の夜着が散らばっていた。夜着だけでなく、下履きも転がっている。
気を失っている間に、尚凞に脱がされたのだろう。乱れて重なる夜着と下着を見ている中に、凛花の心に耐えがたい羞恥芯と恐怖が湧き起こった。
このまま、私は本当にこの卑劣な男に好きなようにされてしまうの?
だが、と、凛花は思い直す。夢の中で凛花は大蛇に喰われはしなかった。間一髪で湖に転落し、かえって事無きを得たのだ。
ならば、天はまだ自分を見放してはいない。夢の中の出来事なのに、凛花はその顛末を信じた。いや、このすべてが絶望的な状況では、わずかな可能性や希望でも縋ってみたかった。
「いやっ」
凛花は渾身の力を込めて、尚凞の身体を突き飛ばした。
夢では確かに自由に動けるようになったのに、何故、こんなにも身体が重たいのだろう?
怪訝に思いながら眼を開くと、まだ靄がかかったように視界がぼやけている。痺れ薬がまだ効いているのだろうか。身体は相変わらず熱いが、それでも意識を失う前ほどのことはない。
意識が次第に冴えてくるにつれ、瞳に映るものの輪郭も明確になり、はっきりとした形を取り始めた。長い翳を落とす睫を細かく震わせ、凛花はやっと完全に覚醒した。
刹那、凛花は声を上げた。まさに、凛花には夢で見た光景そのものの再現に思えた。
趙尚凞が凛花の身体に覆い被さっている!
―どころか、尚凞は凛花の胸と胸の谷間に顔を埋めていた。凛花といえば、今更だが、一糸纏わぬあられもない姿で横たわり、尚凞の方も上半身は何も付けていなかった。
尚凞の瞳は爛々と異様な輝きを増している。その粘着質な視線は、乳房の薄桃色の先端に注がれていた。
尚凞が堪りかねたように顔を動かし、乳房の先端を口にすっぽりと含む。片方の手は嫌らしく空いた乳房を揉みしだき、まるで赤児が母乳を吸うように、くちゅくちゅと音を立てて一方の乳房を吸う。
生温い口も、淫らな水音も、すべてが厭わしく気持ち悪い。
凛花の瞳に涙が溢れた。
涙の膜に曇った瞳を動かすと、布団の傍に凛花の夜着が散らばっていた。夜着だけでなく、下履きも転がっている。
気を失っている間に、尚凞に脱がされたのだろう。乱れて重なる夜着と下着を見ている中に、凛花の心に耐えがたい羞恥芯と恐怖が湧き起こった。
このまま、私は本当にこの卑劣な男に好きなようにされてしまうの?
だが、と、凛花は思い直す。夢の中で凛花は大蛇に喰われはしなかった。間一髪で湖に転落し、かえって事無きを得たのだ。
ならば、天はまだ自分を見放してはいない。夢の中の出来事なのに、凛花はその顛末を信じた。いや、このすべてが絶望的な状況では、わずかな可能性や希望でも縋ってみたかった。
「いやっ」
凛花は渾身の力を込めて、尚凞の身体を突き飛ばした。
