
山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第7章 花の褥(しとね)で眠る
その朝、村長が俄に腰の痛みを訴えた。凛花は旅の間中、後生大事に背負っていた頭陀袋の底から小さな巾着を取り出した。その中には道中の間も何度か世話になった各種の薬が入っている。
凛花はその中から痛め止めを選び、家の庭で火鉢を使って土瓶で煎じ、村長に呑ませた。
「儂はほんの子どもの時分から、苦い薬が苦手でのぅ」
まるで幼子のように駄々をこねる村長に、凛花は微笑んだ。
「良薬は口に苦いと昔から言います。これは痛みを抑えると同時に身体を芯から温める効能もありますから、直に楽になるでしょう」
「それにしても、この苦さは何とかならんのかな」
それでもまだ苦いとしきりに顔を顰めるのに、凛花は笑った。
「判りました。次回からは、ほんの少し蜂蜜か砂糖を混ぜましょう。それで、少しは呑みやすくなると思いますよ」
「こんな苦い薬、一回きりでも十分なのに、まだ呑まねばなりませんかのぅ」
村長が情けない声を上げる。
凛花は声を立てて笑った。
「最低でも今日から向こう二日間は呑んで戴きますよ」
「うへぇ」
素っ頓狂な声を上げる村長に、凛花は更に言い添えた。
「晩には腰に貼った湿布を貼り替えましょう。もし、あまり痛みが引かないようなら、藻草も携帯していますゆえ、お灸でも試みてみます」
「何と、灸までせねばならんのか」
いつもは落ち着いた村長がまるでいきなり子どもに返ったような取り乱し様だ。
「灸なんぞは、うんと子どもの頃に母親にされた記憶があるきりで、ついぞした憶えはないが。儂は熱いのも苦手ですわ」
凛花は頷いた。
「腰の痛みには灸などもよく訊くんですよ。本当は針が打てればなお良いんですけれどね。私は医者ではありませんから、それはできないのです」
「いやいや、若さまがなさっていることや手際の良さを見れば、十分、医者で通じますぞ」
「ふふっ、そうですか?」
凛花は褒められて満更、悪い気もしない。
凛花はその中から痛め止めを選び、家の庭で火鉢を使って土瓶で煎じ、村長に呑ませた。
「儂はほんの子どもの時分から、苦い薬が苦手でのぅ」
まるで幼子のように駄々をこねる村長に、凛花は微笑んだ。
「良薬は口に苦いと昔から言います。これは痛みを抑えると同時に身体を芯から温める効能もありますから、直に楽になるでしょう」
「それにしても、この苦さは何とかならんのかな」
それでもまだ苦いとしきりに顔を顰めるのに、凛花は笑った。
「判りました。次回からは、ほんの少し蜂蜜か砂糖を混ぜましょう。それで、少しは呑みやすくなると思いますよ」
「こんな苦い薬、一回きりでも十分なのに、まだ呑まねばなりませんかのぅ」
村長が情けない声を上げる。
凛花は声を立てて笑った。
「最低でも今日から向こう二日間は呑んで戴きますよ」
「うへぇ」
素っ頓狂な声を上げる村長に、凛花は更に言い添えた。
「晩には腰に貼った湿布を貼り替えましょう。もし、あまり痛みが引かないようなら、藻草も携帯していますゆえ、お灸でも試みてみます」
「何と、灸までせねばならんのか」
いつもは落ち着いた村長がまるでいきなり子どもに返ったような取り乱し様だ。
「灸なんぞは、うんと子どもの頃に母親にされた記憶があるきりで、ついぞした憶えはないが。儂は熱いのも苦手ですわ」
凛花は頷いた。
「腰の痛みには灸などもよく訊くんですよ。本当は針が打てればなお良いんですけれどね。私は医者ではありませんから、それはできないのです」
「いやいや、若さまがなさっていることや手際の良さを見れば、十分、医者で通じますぞ」
「ふふっ、そうですか?」
凛花は褒められて満更、悪い気もしない。
