
たまゆらの棘
第4章 再臨
倫はもう一度、東京に帰って仕事を探そうと心に決めた。
そして落ち着いたら…藤原に会いに行こうと。もしも藤原があそこにいなくても、永遠に恋人は藤原だけだ。
藤原の背中をずっと見てきた。
その姿は忘れない。
夕暮れの砂浜に少女は倫に赤ん坊を預け、サンダルを脱ぎ捨て、素足で浜辺を小走りした。赤ん坊を抱くなんて倫は初めてだった。柔らかくて温かい感触…無邪気な瞳は確かに「生まれながらにして罪なものなどいない…」この子がどう成長するのか倫にはわからなかったが、今は天使だと思った。
素足で走る少女につられて何故か倫も靴を脱ぎ、浜辺を素足で歩き、少女の後をついて行った。
サクサクとした砂が足に縫い込むように、そしてそれは何か、倫の胸に溜まっていたものを吸い取るように、また、それらが倫の足から…体の奥から染み出て行くように感じた。
その感覚は倫の胸を
徐々に軽くしていくようだった。
自然にまたぱらぱらと涙が出てきた。
(俺は俺の過去を呪っていた。呪って生きてきた。呪うことが俺の生きる糧だった。俺は今、洗い流す、心の膿を。呪いを。)ポロポロと情けない程に涙が出る。
「どうして泣いてるの?」はるかは倫に聞いた。
「…わからない。」
「嘘。涙は心を綺麗に洗うシャワーなんだよ。何を流しているの?」
「わからないよ」
倫は解っていながら、はるかには答えず、むせび泣いた。
涙は温かかった。
倫の素足と倫の体の一部が生まれて初めて呼応した。夕暮れが眩しく、はるかが小躍りする姿が倫の瞳に美しく映った。美しいと思う心も倫は初めて知ったのかもしれなかった。
魂というものがあるのなら、棘がとれた瞬間だった。
プライド…倫は父親と一緒に自転車で走った瞬間の夕日を、今、ここで見ていた。
そして落ち着いたら…藤原に会いに行こうと。もしも藤原があそこにいなくても、永遠に恋人は藤原だけだ。
藤原の背中をずっと見てきた。
その姿は忘れない。
夕暮れの砂浜に少女は倫に赤ん坊を預け、サンダルを脱ぎ捨て、素足で浜辺を小走りした。赤ん坊を抱くなんて倫は初めてだった。柔らかくて温かい感触…無邪気な瞳は確かに「生まれながらにして罪なものなどいない…」この子がどう成長するのか倫にはわからなかったが、今は天使だと思った。
素足で走る少女につられて何故か倫も靴を脱ぎ、浜辺を素足で歩き、少女の後をついて行った。
サクサクとした砂が足に縫い込むように、そしてそれは何か、倫の胸に溜まっていたものを吸い取るように、また、それらが倫の足から…体の奥から染み出て行くように感じた。
その感覚は倫の胸を
徐々に軽くしていくようだった。
自然にまたぱらぱらと涙が出てきた。
(俺は俺の過去を呪っていた。呪って生きてきた。呪うことが俺の生きる糧だった。俺は今、洗い流す、心の膿を。呪いを。)ポロポロと情けない程に涙が出る。
「どうして泣いてるの?」はるかは倫に聞いた。
「…わからない。」
「嘘。涙は心を綺麗に洗うシャワーなんだよ。何を流しているの?」
「わからないよ」
倫は解っていながら、はるかには答えず、むせび泣いた。
涙は温かかった。
倫の素足と倫の体の一部が生まれて初めて呼応した。夕暮れが眩しく、はるかが小躍りする姿が倫の瞳に美しく映った。美しいと思う心も倫は初めて知ったのかもしれなかった。
魂というものがあるのなら、棘がとれた瞬間だった。
プライド…倫は父親と一緒に自転車で走った瞬間の夕日を、今、ここで見ていた。
