
たまゆらの棘
第3章 螺旋
「俺は小さな頃から蝋燭が好きだった。だから蝋燭は十歳になる頃には造っていた。叔父が蝋燭を教えてくれた。叔父は蝋燭商だったから。」サムは話し出した。「それはラッキーだ。」倫は答えた。
「だかな。俺の両親は違った。俺はバイオリンの英才教育を受けていた。俺はバイオリンが死ぬ程嫌いだった。1音、違うと鞭が飛んできた。俺には才能なんてないのに。親馬鹿だよ全く。俺は非行に走った。高いバイオリンをメチャクチャに壊して家を飛び出した。そして叔父の家に行ったんだ。十四だった。」「十四?…じゃ、僕と同じだ。僕も十四で家を出た。でも…行く所が無くて…転々としたよ。」「もしかして自分を売ってか?」サムは聞いた。「…うん。僕にはそれしかなかったから…」倫は答えた。「おお…。マリア…憐れみあれ。」サムは十字を切った。そして「悪かった…俺は何も知らなかった。もう二度と無理やりなんてしない。倫、君は純粋だ。傷つけて済まなかった…」サムは泣き出した。「サム、どうして君が泣く?」「スラム街にいる君と同じ子供たち…それを思い出したんだ…倫、君がそうだったなんて…」倫はますますこのサムスンという男が解らなくなった。残酷で自己愛の塊かと思うと、こうしてストリート・チルドレンの為には涙を流すのだ。サムはきっと二重人格なのだ。その中でサムにも純粋な欠片があることを知って、倫は少し同情し、安心した。以前はただのキチガイだと思っていたからだった。
「だかな。俺の両親は違った。俺はバイオリンの英才教育を受けていた。俺はバイオリンが死ぬ程嫌いだった。1音、違うと鞭が飛んできた。俺には才能なんてないのに。親馬鹿だよ全く。俺は非行に走った。高いバイオリンをメチャクチャに壊して家を飛び出した。そして叔父の家に行ったんだ。十四だった。」「十四?…じゃ、僕と同じだ。僕も十四で家を出た。でも…行く所が無くて…転々としたよ。」「もしかして自分を売ってか?」サムは聞いた。「…うん。僕にはそれしかなかったから…」倫は答えた。「おお…。マリア…憐れみあれ。」サムは十字を切った。そして「悪かった…俺は何も知らなかった。もう二度と無理やりなんてしない。倫、君は純粋だ。傷つけて済まなかった…」サムは泣き出した。「サム、どうして君が泣く?」「スラム街にいる君と同じ子供たち…それを思い出したんだ…倫、君がそうだったなんて…」倫はますますこのサムスンという男が解らなくなった。残酷で自己愛の塊かと思うと、こうしてストリート・チルドレンの為には涙を流すのだ。サムはきっと二重人格なのだ。その中でサムにも純粋な欠片があることを知って、倫は少し同情し、安心した。以前はただのキチガイだと思っていたからだった。
