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アルカナの抄 時の掟

第8章 「隠者」正位置

バックに、大国。ヴェルテクス王国といえば、ここ数年で領土を急速に拡げている国だ。絶対王政が敷かれ、武力により国民を支配する。

「誰が敵なのか…今のところまだ特定できていません。宮殿内では、これに関する話はしないでください――どこで誰が聞いているかわかりませんから」

…そうか。アルバートが私に、なにも教えられないと言ったのは…私に危険がおよぶのを避けるためだったんだ。

「わかりました。アルバートの前でも、なにも知らないフリをしておきます」

それにしても、相手が国となると…下手な真似はできないなぁ。

だからアルバートも慎重に動いているのだろう。自分はどうすればいいだろうか、と考えながら読み終えた手紙を返そうとした時、突然視界がブレた。

……!?

キーン、という耳鳴りとともに、ザザ、と目の前の景色が砂あらしのように歪んだ。そして刹那、ここじゃないどこかの映像が映った。

だが、すぐに耳鳴りは収まり、視界ももとに戻った。

「………」
ぱち、ぱち、と何度かゆっくり瞬きをする。変わらぬ大地と青空。一瞬、飛行機雲とアスファルトの道路が見えた気がしたが…。

「今、地震かなにか起こりました?」
遠回しに、客観的な様子を聞いてみる。自分はずっと、ここにいたのだろうか。

「いえ…?」

「あ…そうですか。すいません、なんでもないです」

なんだったんだろ、今の…。


「…大丈夫ですか?」
ヴェキが言った。

「平気です…」
カオルがそう返すと、ヴェキは少し押し黙った。少しして、彼が口を開いた。

「…あなたに言っていないことが、まだあります」
目を閉じるヴェキ。深刻な話だろうか。

「この世界と、あなたの世界のことです」

カオルが目を見開く。彼には、自分が何者で、どこから来たのか、言っていないはずだ。

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