テキストサイズ

Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


「てめー嘘泣きかよ」

「え、なんのことー? あたし、『泣いてます』なんて言った覚えないけど」


 イヤミなほど鮮やかな笑顔でそんなふうに言われ、宵はむっと瞳を細める。

 口に出さなくたって、態度で充分アピールしてただろうと。


「前言撤回はなしね。さあ、時間もないし、早急にお着替えに行きましょう! レッツラゴ-!」


 さっきまでの怒りはどこへやら、立ち上がって宵の腕を掴みながら歩き出す明の表情はにこやかだ。

 明に連行されながら、宵は大山にちらりと視線を向けた。

 だが、今度ばかりは助け舟は出せない。そんな思いを込めて、大山は口先だけを動かして「諦めろ」と一言。

 もう観念するしかなかった。


(あとで絶対一発殴ってやる)


 もちろん、女子に手を出すわけにはいかないので大山を。

 理不尽だろうがなんだろうが知ったこっちゃなかった。

 クラスメイトからの好奇の視線をかいくぐり、明と共に教室を出る。目指す先は今は使わていない空き教室らしい。

 こうして数週間に渡る宵の逃亡生活は、明の知略によりあっさりと幕を閉じたのだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ